スランプななめくじ

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夜の11時半。子供が出歩いてはいけない時間。
誰もいない冬の公園は、いつもより寂しく感じた。

親と喧嘩をした。
それも、頬が赤く腫れるほどの大喧嘩。
きっかけは本当に些細だったと思う。覚えてない。
大人と子供に挟まれた心が、
親の言葉に酷く傷付き、荒れた。

小さい頃、よく遊んだブランコに腰掛ける。
足で地面を蹴り、キィキィと揺らした。
何時だって背中を押してくれたのは母だった。
何度も押してとせがみ、もっと強くと喚いた。
それでも嫌な顔ひとつせず、背中を押し続けてくれた。

今や会話など存在しない。目も合わない。
いや、きっと逸らしているだけ。
母はいつも見守っていると知っているのに。
きっと今日の喧嘩だって悪いのはこっちだ。
屁理屈を並べて、母を傷付けて、父に叩かれた。
母はそんな父に怒鳴って、泣き出した。

謝らなくてはいけない。
いつも背中を押してくれる、優しい母に。
道を誤ったら叱ってくれる、厳しい父に。
一番の味方であり、唯一の理解者である親に。

地面を踏みつけ立ち上がる。
母は泣き止んでいるだろうか。
父は母を慰めているだろうか。
伝えたい事が沢山あるけど、最初の一言は決まってる。

もうブランコは揺れていなかった。



「ただいま」

2/1/2024, 12:18:34 PM