『紅茶の香り』
紅茶。
紅茶とは素晴らしい飲み物であり、その素晴らしさを語る上で外せないのは言わずもかな香りである。
馥郁とした紅茶の香りが鼻まで届けば、それだけで安らぎと少しの幸福感を与えてくれる。
どんなに臭いものであっても、それが紅茶の香りになったなら、それだけで素晴らしい世界になるとは思わないだろうか?
道路脇のドブも、家で出た生ゴミも、それこそぼっとん便所でさえ。
そんな世界は異常だと、そう思うだろうか?
本当に? ……本当にそうだろうか?
人々は誰しもが後ろめたいものを抱えていて、そして蓋をする。
──だって、それは臭いものだから。
蓋から漏れ出す匂いだけでも耐えられない程の悪臭だ。
でもそういうものに限って実は大事なものだったりする、自分にとって……もしくは誰かにとって。
臭いものが紅茶の香りになれば、結局のところ紅茶の香りがするものに蓋をするだけだと、そう考えるだろうか?
……しかし、しかしだよ。
蓋から漏れ出す匂いが紅茶の香りになれば、少しはそれに釣られて蓋を開ける人々も現れるのでは無いだろうか?
そしてそれは本来、正常な事なのではないだろうか?
──だって、それは大事なものだから。
こうして紅茶好きの神様は、臭いものを紅茶の香りに変えてしまいました。
結果はもちろん……大規模な食中毒によって世界はパニックになりましたとさ。
──てへっ!
10/27/2022, 1:32:55 PM