「『日の出』の文字が入っていれば、『土曜日の出勤』とか『初日の出庫』でもアリなんじゃねえかって、ふと思ったワケよ」
つまり、去年の「日の出」のお題で普通に日の出ネタ書いちまったから、ネタがだな。
某所在住物書きは頭をガリガリ。天井を見上げて弁明した――あと2ヶ月程度で3年目なのだ。
「来年も、『日の出』のお題が来るワケよ。
今また王道ネタを投稿したら、確実にネタが枯渇知ちまうワケよな。うん……」
お題の前後に、言葉を追加してみる。
お題の間に、句読点を付けてみる。
1年と10ヶ月程度「書く習慣」のお題と向き合い続けて、物書きが体得した「抜け道」である。
日の出は、日の出だ。
お題を文字で挟めば日曜日の出勤ネタにもなる。
――――――
お題の「日の出」を太陽と地球の関係ではなく、別の言葉として書きたかった物書きの、これがいわば、ひねくれた提案。
すなわち「三ヶ『日の出』費」はどうだろう。
「ここ」ではないどこかの世界。「世界線管理局」なる、厨二ちっくファンタジーな団体組織には、
年末年始で休業が入る部署と、入らぬ部署があった。今回の舞台は後者であった。
法務部執行課、実働班の中の特殊即応部門である。
ところでこの特殊即応部門の部長、三ヶ日の出費が少々特殊だったようで。
「いや、俺としても、想定外だったんだがな」
お題回収役であるところの部長、ルリビタキが、赤い煎餅をガリガリ噛みながら言った。
彼の目の前にはホワイトボードと、付箋と、マグネットとマーカーで示された多くの情報。
作戦立案中なのだ。敵対組織に、管理局の局員が10名ごっそり、拉致されたのである。
「この煎餅は、ひょんなことから、まぁ、うん」
色々あったんだ。ルリビタキは呟いて、また赤い煎餅をガリガリ、ガリガリ、そしてぽつり。
「噛みごたえが丁度良い」
年が明けて早々、敵対組織による局員の大量拉致に対応していた、ルリビタキ部長。
情報は錯綜し、管理局は敵組織からの人質交換条件を承諾するつもりが無く、
「こういうとき」のために存在している超法規的即応部門の「特応」が、局員救助の指示を受けた。
ヘビースモーカーのルリビタキは、
困難な仕事が詰まったり、詰んだり、
敵性人物が腹に据えかねる極悪党であったり、
ともかく苛立たしい感情が湧いてきたりしたとき、
己の衝動と、いきどおりと、その他諸々とを鎮めるために、激辛な味覚を欲するタイプであった。
ここでお題回収。
切羽詰まって「敵対組織を問答無用で殲滅してしまえば良い」に行き着きそうになったルリビタキ、
ひょんなことから、「こちら」の世界の激辛煎餅に関する情報を入手した。
長野の某大社に、真っ赤っ赤、大辛一味の煎餅が売られているという。
丁度とびきりの激辛が必要なところだった。
ルリビタキは昼休みの短時間で現場に急行。
正月三ヶ「日の出」費の中で、一番の量と、一番の合計額の買い物をしたのであった。
つまり店の激辛煎餅をザッカザッカとカゴにブチ込み、買い占めてきたのである。
「経理に聞いたが、経費では落とさんとさ」
まぁ、当然だな。ガリガリ。
ルリビタキは1枚目を食い終わり、すでに2枚目に手を出している。はらわたの煮えくり返る苛立たしさと焦燥に、激辛の刺激と煎餅の固さが効くのだ。
「おかげでタバコの量は減るかもな」
ガリガリガリ、がりがりがり。
2枚目も順調に噛み砕いていくルリビタキは、煎餅を持つ手と反対で、ホワイトボードに文字を書く。
「……この方法で行くか」
果たして、彼が為すべき同僚救出のプランは完成。
三ヶ日の出費は間違いなく、彼にとっても、彼の職場にとっても、良い結果をもたらしたのであった。
最終的に、ルリビタキの同僚は負傷者ひとり出さず救出され、真っ赤っ赤煎餅の三ヶ日の出動は20枚にのぼったとさ。
1/4/2025, 3:50:39 AM