ずい

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『カラフル』

白と黒と灰色。物事を割りきって考えるようになってから同じような日々が続いていた。当たり障りなく、問題を起こさないように、淡々と生きてきた。はずだった。

「だって、あんたの絵すげえじゃん! 俺もああいう芸術は爆発だみたいなの描きてえんだよ」

絵の具を取る手が震える。
あのときの彼はいま隣でキャンバスに向かっている。

爆発なんてしたら色が散らかる。規則正しければそれでいいじゃないか。でも彼に心の中にあった自由を求める本心を指摘されてからすべてが変わった。

下校中に寄り道をするようになった。
師事されたい先生に会えた。短期ではあったものの泊まりがけで指導を受けた。
隣街の花火大会に出かけた。
体育祭の部活別マラソンで文化部一位を取った。

個性に色づきがあると知った。場所にも特有の色を用いた風景があると気づけた。
世界は、色であふれている。

最初のひと筆をキャンバスに乗せる。
ライブペイントなんて初めての試みだった。
キャンバス越しに見えるのは、友人を含めた数十名の観客たち。
大きく息を吸うと筆を横に払った。

5/1/2024, 1:34:19 PM