財布だけを持って理由のないまま街へ出た。誰かに呼ばれたわけでも、逃げたいほどの不満があるわけでもない。ただ、誰もいない海に行きたいと思った。
電車で遠く遠く進むほど、存在は軽くなる。脳みその重荷も軽くなる。
それなのに僕は妙に現実的で、帰り道と終電の時間だけは正確に覚えていた。スマホは置いてきたのに。
僕はちゃんとあの家に帰りたいんだな、と訳も分からず納得をして、少し笑った。なんか安心した。
電車から降りると、潮風で鼻がつんとする。ザーザーと音がする。
反射で光る水面に目を細めて欠伸を、ひとつ。
/街へ
1/28/2026, 3:59:02 PM