ほむら

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「たとえ間違いだったとしても、あなたが私を選んでくれて嬉しかったよ」

私は、なんの取り柄もない没個性的な人間だ。生まれつきの才能なんてものも無いし、何をやっても中途半端で、極めるほど得意なことも持ち合わせていない。言わば他人からしたらモブにしか見えないような存在だ。それに対して愛しの彼は、恵まれた美貌を持っていて、頭脳明晰で紳士的な人だ。世間一般でいう「モテる」要素をこれでもかと詰め込んだ彼は、今まで引く手数多だっただろう。隣に立つのが私なんかじゃ釣り合わない存在なのは見てわかるはずだ。

素直に想いを伝えられないひねくれ者な私は、つい彼にそう言ってしまった。それを聞いた彼は一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに真剣な表情に戻って私を見つめた。

「間違ってなどいませんよ。俺は俺の意思で、貴方を選んだんです。自分では気づいていないでしょうけど、貴方は他人を思いやる気持ちが人一倍強いのですよ。俺はそんな貴方に救われたんです。だからどうか、貴方自身を卑下しないでください…」

私を真っ直ぐに見据えるその瞳は、最後の方には潤んでいるように見えた。なんで、私なんかの為に涙を流してくれるの?という気持ちを言葉に出来ずにいると、彼は私の心を読んだかのようにこう言った。

「俺は、大好きな貴方が悪く言われるのが悲しくて、嫌なんです。たとえそれが他でもない貴方自身からだとしても」

私を強く抱きしめる彼の表情を見ることは叶わないが、声が震えていたので泣いているのだろう。私だって彼と出会い、愛し合うこの幸せを間違いだって思いたくない。そう考えながら彼を抱きしめ返す私にも、いつの間にか涙が頬を伝っていた。

テーマ「たとえ間違いだったとしても」

4/22/2024, 10:41:46 AM