配送員A

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たくさんの思い出たちが
口々に私に何か言う
その声がまるで二つか三つの幼児のような
か細い高い声なのだ
それがてんで勝手にばらばらに
一斉に私に訴えるのだから
とても聞き分けていられない
私は宥めようとするけれど
思い出たちは聞き分けない
ぴいぴい、ぴいぴい
雛鳥か何かのように
一生懸命に訴える
私は困り果てながらも
なんとか宥めようとする
分かった分かった
近ごろどうも忙しくて
暇がなかっただけなんだ
けして忘れちゃいないとも
嫌いになったわけでもないよ
あとで一緒に遊んでやるから
ちょっと大人しくしておいで
そう言ってやれば
おとなしく口を噤むのもあれば
ますます喚き立てるのもある
私は笑って頭を振ると
あとでね
そう言ってやりかけの仕事にまた戻る
思い出たちが私を呼ぶ
いとけない声を聞きながら
分かった分かった
あとでまた遊んでやるから
そのうちまた遊んでやるから
今はまだだめだよ
私は今に向き直る
そうして呟く
お前もあの群れに入ったら
私に構われたがるのかね?
‘今’は笑って答えなかった

11/19/2022, 10:05:12 AM