もんぷ

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さらさら

 七夕が近い6月末から7月初週にだけ講堂の横に現れる大きな笹。大学祭が終わり夏休み前のテスト期間があるまで何もイベントがないのはいかがなものか、とパンフレットの欄を埋めるだけに作られた雑な七夕祭のメイン。最初こそ人を集めるものの一度願いを書いてつるしてしまえばもうおしまいというのだからイベントと言って良いのかどうかも不思議だ。にしても、学祭実行委員の端くれがその七夕祭の手伝いとして膨大な量の短冊を取って白い紙に包んで処分する仕事を担わされるのは本当に面倒だ。面接で言うために学祭実行委員に入ったはいいものの、兼部している軽音楽部、さらにはバイトが忙しくて中々顔を出せないから、一日だけで済むこの七夕祭の担当を志願したのは自分だけれど。はぁ、めんどくさい。色とりどりの細長い画用紙の裏には黒ペンで書かれた願いたち。大抵は単位ほしいだとか就活決まりますようにとか彼女欲しいとかそういう大学生らしい願いで埋まっている。そもそも自分はこういう系は信じていない。神様に願っても叶わないことばかりだったのに、織姫と彦星なんてただのカップルだろ。なんてこんなことを考えてしまう捻くれた考えの持ち主だから叶えてくれる神もいないのかもしれない。紙をまとめあげて指定された場所に持っていく。余裕で日は暮れていた。大きなあくびをしながら携帯に目をやる。ふと思い立ってあの人のトークページを開いてメッセージを送る。
「七夕は何か願いましたか」
送って早々に既読がついてメッセージが返ってくる。
「世界平和です」
端的なその文字を見てふわりと笑みが溢れる。自分は色々信じないタイプだしどうでもいいけど、バカみたいに真っ直ぐに世界平和を願うこの人の願いは叶ってほしいと思った。

5/28/2025, 12:19:43 PM