ねちょねちょ系鯖缶

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ころりん、ころりんと
蜩に交じった誰かが手招く
風鈴の音だ
軽く見回すだけでは姿も現さないが、きっと熱に耐えかねた居住者の声でも代弁しているのだろう

彼らの聲は不得手だ
確かに安らぎを与えてはくれよう
実際、この国に生まれた人らの約半数ほどに、その音色を耳に入れると体感温度の低下が見込めたと聞いたことがある
なんでも脳が、風が吹いたと聴き紛うそう
だけれどしかし、どうしても恐ろしいのだ

なんとはなしに、漠然と
その音に、背の底の真相を、突かれるように思えているから
これでいいのかと滔々と、糾問されているようで
君のその鋭利で浅い叫声が、どうしても

あぁまたほら弾けそうな程に劈いている
どうせ幾千とその波の世界に連れ立っていくんだろ
そして指差し続けるんだろう、あの日君を見た日の普通を
構わないよ、構わないから構わないでくれ
君を見つけていると痛いんだだから


本当、全くもって本当に
今日が生憎の曇天で、よかった

7/12/2025, 12:31:27 PM