お題『どうすればいいの?』
口からたらり、と垂れた。
どうしようも無くて、もがいても掴むのは空気で。
心がしぼむ。
いつの間にか、私は一寸先すら見えない闇の中へ辿り着いてしまっていたことに気付いた。
周りを見渡せば、遠くにうっすら人が見える。しかし彼等は、どの人も、その人なりに頑張っているように見える。きっと彼らも手一杯だろう。彼らに声をかけるのは申し訳なく思えて、口を噤んだ。
助けて、ねえ、助言して。
そう言いたい気持ちを堪えた。
手を伸ばすのを躊躇った。
ふと、影ができたことに気付いた。隣を見遣れば、君がいた。
君は、撫でるような笑顔で、どうしたの。と問う。その手にはカンテラが揺れていた。
口を開けないでいれば、君が深呼吸をする。片目でこちらを見るから、私もつられて、深呼吸した。
それから、君は「少し眩しいかも。」と呟く。
「ゆっくり、見てみて」
君がそう言うから、一度目を閉じて、自分の爪先から、ゆっくり前を見た。
カンテラに照らされて、周りがよく見えた。
足の先には、芝生が広がっていた。柔らかそうで、寝転がったら心地の良さそうな。
すぐそこに、ベンチがある。公園、のような。目を凝らせば、遊具もある。他には?と空を見上げる。
星々をかき分けて、邪魔をしないように静かに泳ぐ飛行機がいた。気持ちが良さそうだ。
口を開けてそれらを見ていると、思わず、口角が上がる。私のまわりには、こんなに素敵なもので溢れていた。
そして、零れたのだ。
「どうすればいいの?」
それを聞いてから、君は歯を見せて笑った。
「どうとでもしちゃおう!」
11/21/2024, 1:18:30 PM