白い息を吐きながら恋人はいつもより少し早い足取りで歩いていた。
「もうちょっとゆっくり歩いてよ」
後ろから声を掛けるが聞く耳を持たない。
「イルミネーション、始まったよ」
「知らない。寒い。早く温かいコーヒー飲みたい」
にべもない。
点灯式の時間とか調べたのにな。
「クリスマスとかどうでもいい」
まぁ、キリスト教徒じゃないしね。
グレーのマフラーに黒いコートの恋人の、白い息を吐く口付けだけが赤い。
その向こうにはクリスマス仕様のショーウィンドウとイルミネーション。
足早に歩く恋人の、ヒールの音が子気味いい。
「綺麗だね」
「何がァ?」
君が、とは何故か言えなくて、大きく一歩踏み出した僕は恋人と肩を並べた。
END
「きらめく街並み」
12/6/2025, 8:00:12 AM