誰かの落とし物
「….」
おれは落ちている仮面ライダーのお面を服とおなかの間にしのびこませた。
「おい、おまえなにしてんだ!はやくとってこいよ!」
ケイのデカい声が聞こえた。
「ごめん、ちょっとまってて」
電柱のそばに落ちているボールをひろいあげて、おなかを抑えながら公園にもどった。
「おせえよ、お前がそらしたんだからはやくとってこいって」
「ごめんごめん」
ケイは相変わらず、おれに文句をつけてくる。ケイは野球をやるのに人数がたりないからとおれを毎回さそってくるけど、きてみれば毎回こうだ。
「じゃあモーチョがレフトやって。かわりにおまえはサードな」
おれはとりあえずボールはケイに渡して、かばんにお面をしまいにいこうとした。
「あ、おいおまえ、腹になんかかくしてるだろ」
察しのいいモーチョがおれの腹をさぐってきた。
「え、これ仮面ライダーじゃん!だっせー!」
モーチョとまわりのやつらにはやしたてられる。
そこでケイが血そうを変えてやってきた。
「おいおまえこれ、おれの弟のやつ。」
まずい。こんなことがあるのか。
「弟のやつ。ここにシールはってあるの。おれの弟がだいじにしてた。もしかして、ぬすんだのか?」
おれは何もいえなかった。泣くしかなかった。
人のものをぬすんで、野球はへたで、泣き虫で。あこがれの仮面ライダーとはほど遠いし、なさけなかった。
おれはなきじゃくって家にかえって、今までとってあった仮面ライダーのろく画をぜんぶ消した。
10/3/2025, 3:03:51 PM