#2 静かな終わり
あぁ、終わりって、こんなにさっぱりなんだ。
昨日まであった2人分のぬくもりも。
キッチンから香る温かい湯気も。
君の優しい笑い声も。
はじめから決まってた。
終わりがあること。
上京してきた彼女が家を見つけるまでの期間、俺の家に住ませてあげる。
そういう約束だったからだ。
残ったものはたくさんある。
洗面所には使いかけの歯ブラシ。
キッチンには彼女のお気に入りのマグカップ。
洗濯機には彼女のハンカチ。
それから、拭えない甘ったるい思い出。
甘さに胸焼けして、ソファから動けない。
ぼーっとお笑い番組を眺める。
「腹、減った。」
独り言が宙を舞って、居心地悪くそこに残った。
ようやく起き上がってキッチンに立つ。
とりあえず冷蔵庫を開けてみる。
あれ、何もない。
そういえば、昨日彼女が、
「冷蔵庫に何もないね、コンビニで買ってこよっか!」
なんて、はにかんでた。
そうだ。それで、二人で出かけて、茶色ばっかりのつまみと酒を買って、呑みながら帰ったんだった。
「寒いね。」
って、笑い合いながら。
戻ってきそうになった感情を誤魔化すように蛇口を捻る。
鍋に水を入れて、火にかけた。
彼女に隠してたインスタントラーメンを取り出してきて、もう隠す必要ないな、と笑いをこぼす。
鍋から湯気が立ち上がる。
頬が湿ってるのは、目の前が少しだけ見づらいのは、きっと、湯気のせいだ。
12/29/2025, 11:54:25 AM