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『命が燃え尽きるまで』

 僕は階段を上っていた。
 屋上に続く階段だ。自分が通っていた学校の、空に1番近い場所。
 普段は鍵がかかっているその場所は、なぜだかいつも、この時間にだけ入ることができる。

 「消えたい。」
と君は言った。
僕はどう答えていいか分からなくて、君の隣で前を向き、君の声だけを聞いていた。

 自分の中に、ポツリと取り残されたかのように存在する記憶。
 僕は君のことを知らない。
 
 覚えていないだけなのか、本当に知らないのか。
 ただひとつ分かることは、その声を聞いた場所は、確かにここだったということだ。

 じっと前を向いて、僕は何かを待っている。
 きっと、君の声を待っている。

9/14/2023, 10:47:32 AM