遅れました。お送りします。
▶12.「スリル」
11.「飛べない翼」
10.「ススキ」博士のルーツ
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1.「永遠に」近い時を生きる人形✕✕✕
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とある酒場でのこと。
「話している所をすまない。旅をしているのだが、ここに来たばかりなんだ。良ければ教えてほしい」
カウンター席で店主と親しげに話している旅装の男がいたので、街道について情報収集を試みた。
「おう、いいぜ」
「ありがとう。店主、彼が飲んでいるものを私と、彼にもうひとつ」
「分かってるな、お前。それで何が知りたいんだ」
情報収集には報酬に酒の一杯二杯奢るのが常。
ひと通り聞くべきことを聞いて終わろうとしたのだが、
ここでも旅の目的について聞かれた。
「世界を見る?ハッまだ若いなぁ」
「そうかもしれないな。ではあなたの旅の目的はなんだ」
「おっ、よく聞いてくれたぜ!」
手に持った杯の酒をぐいっと飲み干し、勢いに乗せてテーブルに置けば、小気味よい音と共に男の独壇場が始まる。
「俺の旅の目的は、そうスリルさ!」
スリルって分かるか?若僧。
生きてなきゃ感じられねえ、あれこそが人生よ。
そう断言した男の仕事は崖に生える香辛料やら森の奥に生えるキノコなど、簡単には手に入らない食材を専門にした仕入れ屋で、
食材をより早く届けるための近道や獣を避けて歩く方法に詳しいらしい。
スリルが目的と言いつつ仕事には芯があるようで、酔いつつも線引きはしっかりしていて教え方も丁寧だった。
生にも感情にも乏しい人形だが、
どんな人間に出会えるか楽しめるようになったら、それはスリルかもしれないと思考の隅に留め置いた。
11/13/2024, 8:42:51 AM