卵を割らなければ

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春風とともに

【1.For 中高生】

は 「春の野をかけまわりたいなあ」

る ルビー色の目をキラキラさせた
  雪うさぎ。季節外れの春の雪で
  作られた。

か 「風はもう

ぜ ぜんぜん冷たくないね」

と 溶ける。溶ける。「でも

と 溶けるのは『雪』だけさ。
 『雪うさぎ』から

も もうじき本当の『うさぎ』に
  なれるんだ」

に にっこり笑って消えた雪うさぎの
  魂を、春風は春の野へと運んだ。
  そこにはたくさんの透明な
  うさぎたちが春の喜びに
  かけまわっていた。


【2.For 中高年】

は 「春の5Kって知ってる?」

る 留美子が言った。
  敏江は「知らない」と答える。

か 「花粉、黄砂、寒暖差、強風、
  あとなんだったかな。そうだ、
  乾燥だってさ」

ぜ 「絶望的だわね」

と 敏江は花粉症だ。長く厳しい冬が
  終わり、ようやく春が来たという
  のに春は春で受難の春だ。

と とくに今年は寒暖差がつらい。

も 「もう異常気象過ぎるよねー」
  留美子が溜息をつく。
  敏江もうなずき、

に 「日本はどうなっちゃうのかしら」と
  不安をにじませつつ煎餅をかじる。

3/30/2025, 12:47:23 PM