日の出も見飽きた時間帯。地下迷宮入り口の目と鼻の先で待ちぼうける。
先日冬を知らせた初雪は、整備された石畳に溶け見る影もなくなっていた。
すぐ近くに立っている銅像は、この迷宮を踏破したパーティのもので皆見慣れた顔だ。1つ、2つ、3つ。
4人を基本とするパーティとしては不自然な数に少し遠い目をする。
逃げたのは私だ。私には彼らほどの才能も無ければ、彼女程の努力も出来なかった。
耐えられなくなったのだ。彼らとの実力差に。
しかし、彼らが特別私を咎めることはなかった。そうして、卒業後自然と疎遠になっていった。
ーー泣かないで、ほら一緒に行こう?
幼い頃迷宮内で迷子になった私に、そう言って優しく手を差し伸べてくれたのは彼だった。結局、その恩すら返せた気がしない。私に実力があれば。
「おはようございまーす」
何度目かのため息を吐ききった頃。少し遠くから声がした。
藍色のブレザーを着た二人組。今日の待ち人、アルト君とマルク君だ。
干渉に浸るのはここまでにしよう。地下迷宮は遊びじゃない。
「泣かないで」
12/1/2023, 9:18:48 AM