『モンシロチョウ』
ひらりひらり、花から花へモンシロチョウが飛び回る。
「ちょうちょ〜ちょうちょ〜♪」
「なのはにとまれー♪」
蝶を見ながら口ずさんでいたら、続きを歌われる。
そちらを見ると幼い少女がにこにこしながら歌っていた。
少女は覚えたばかりだったのか、得意気に最後まで歌うとまた最初から歌い出す。
「上手だねー」
「でしょー」
褒めるとさらに得意気に返された。
思わず笑ってしまう。
「ちょうちょ、好きなの?」
「んー、わかんない」
「そっかー」
「あ、パパとママー」
それだけ話すと私にも興味を無くしたのか、その子の両親と思われる二人の下へ走って行く。
両親とお互いぺこりと会釈だけして、三人はまた別の場所へ歩いて行った。
少女の忙しなさが目の前のモンシロチョウと重なり、思わず口元が緩む。
「博士ーすみません、ちょっと見てもらえますか?」
「何かトラブル?」
「モンシロ型のプログラムが少しおかしいみたいで……」
「詳しく見よう」
私は展示室を後にし、呼びにきた部下と共にスタッフルームへと向かう。
絶滅した生き物がまるで、生きてるように見えるというのが売りの展示だ。
おかしな動きをしていては、幼子たちの夢を壊してしまうかもしれない。
早急にプログラムを確認し、修正を行わなくては。
5/10/2024, 1:19:23 PM