特別な存在
『だれかのいちばんになりたいです』
幼い頃に書いた何かの感想文だ。王子様がお姫様を選ぶように、ヒーローがヒロインを選ぶように、バディが相方を大事にするように、物語の中で唯一無二になる2人に憧れていた。
学校のお友達は2人組になる時自分を選んでくれると思っていたし、親友だよって笑った子はクラスが離れても遊んでくれると思っていた。期待してるよと言ってくれた先生は結果を見て褒めてくれると疑わなかった。
──随分と長いこと、そう信じていた。
言葉はどこまでも軽くてその場しのぎでどうとでもなること。期待と無茶振りは使い勝手がいいだけだってこと。唯一無二の相方なんて創作の中だけだということ。そうしてそれを知っていて尚、それに憧れてしまうこと。諦めるには少し名残惜しくて、だけど捨てるしかなかったもの。
いつしか他人を見ようともしなくなって、己の特別はいつの間にか無機物に埋め尽くされていた。言葉を持たないぬいぐるみ。物言わぬ一眼。世界に溢れかえる音楽。1冊の本。波打ち際に打ち上がったガラクタのように部屋に散らばる「特別」は、今日も微動だにせず傍に転がっている。
3/24/2026, 6:46:04 AM