笹海

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 朝、目が覚めると泣いていた。
 泣いていたということは、きっと悲しい夢を見ていたのだろう。はて、と思い出そうとしても、頭はぼんやりと霞掛かったように冴えない。
 ゆるりと起き上がる。ふと足元を見て、いつもならある重みを感じないことに気がついた。朝ご飯をねだる鳴き声も、緩やかに弧を描く尻尾も、柔らかな体温も無い。部屋の隅にポツリと置かれた水入れが酷く凍えて見えた。
 机の上の小さな小さな骨壺と、隣に並ぶ、鈴の付いた赤い首輪。ああ、もうこの鈴は鳴らないのだと、ぼんやりそう思った。
 頭に掛かった霞はまだ晴れない。朝日を浴びた鈴だけが、ぼやけていく視界の中で輝いていた。

7/10/2022, 1:36:06 PM