百加

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はなればなれ


「それじゃね」
「うん」
「ちょいちょい帰るし、そっちも会いに来てよ」
「うん」

 彼の転勤が決まってしまった。もうすぐ電車が来る。
 これまでのように頻繁には会えなくなる。正直、泣きたいくらいに寂しい。
 でも今仕事を辞めるという選択肢は二人ともない。
「ついて行かないの?」
 無邪気なのか無神経なのか、その質問には首を横に振り続けた。
 素直について行くという性格をしてたら良かったのかな。でも私は自分の足で立てるようになりたい。

 彼を乗せた電車を見送って、はなればなれだねと呟く。
 それを繋ぐのは強い想いと運なんだろう。私たちにそれはあるんだろうか。





――そして、何年か過ぎて、
 今は二人一緒に笑っています。



#90

11/17/2023, 9:34:05 AM