Yです。

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【時間よ止まれ】#4

『時間が止まったらな。』

人間誰しも、1度は思ったことがあるはず。
時間なんてそう簡単に止まるものではなく、どんどん過ぎていく。
でも、俺だけは違った。
俺は、生まれつき、

"時間よ止まれ"

と言うと、時間が止まり、

"時間よ動け"

というと、時間が動く能力を持っている。
でも、乱用はできない。
一日に6回使ってしまうと、体のほとんどのエネルギーが使われて、倒れてしまう。

ある日、俺は最近使ってなかったから、今日はこの能力を沢山使っちゃおうかな。と思った。
嫌いな上司を禿げさせてみたり、
嫌な感じの取引先の人を転ばせに行ったり、
ストレス発散で都心で叫んでみたり、
色々な事をやった。

「これでもう5回か、、」

終わるのはあっという間だった。
そんな時、ある人が目に入った。
トラックに引かれそうな小学生の男の子。
とっさに、助けなきゃ、と思ったが、もう5回使っているため、もう1回使ったら倒れてしまう。
でも、目の前には引かれそうな小学生。
ええい、もう、どうにでもなれ!という気持ちで、

「時間よ止まれ!!!」

と叫んだ。
すると、時間が止まった。
いつもなら、時間は止まらず、倒れるはずだった。

「え、あ、え、なんで、、」

困惑と驚きが止まらない。

「あ、た、助けなきゃ、!!」

俺は、小学生を歩道に連れていった。
この後、どうなるのだろう、
6回目の後は初めてだ。

「時間よ、、動け、、」

怖さに目を瞑ってしまった。


次に目を開けた時は、病院のベッドだった。

「おかあ、、、さん、、?」

お母さんは怒っていた。

『あんた、6回目使ったでしょ、ほんと、何に使ったのよ、ばかねぇ。』

お母さんに言われて、自分でも行動を見返してみることにした。
小学生の頃に、トラックに絵を描いたり、
給食の苦手なものだけ戻したり、
テストで他の人の用紙をカンニングしたり、
いじめっ子を殴ってみたり、
上司、先輩、取引先に嫌がらせ、
今まで、自分のことだけを思って時間を戻してきた。
でも、今日、6回目を使った時、
あれは、人のためだった。
神様も、人のために使うなら6回目を使わせてもいいと思ったのだろう。

「俺、もう自分のためだけに時間止めない。」

『え?あんた急にどうしたのよ?』

お母さんには理解できなかったようだけど、
俺はこれから、人のためだけに時間を止める。
そう決意した。

9/19/2023, 9:32:29 PM