久遠 翠。

Open App

22時38分。
宮下 蒼と書かれてる画面をスワイプする。

「もしもし」
「あ、瑠菜ちゃん、急にごめん!高野です!今、宮下と飲んでたんだけど、こいつ、瑠菜ちゃん来ないと帰らないとか言い出してさ」

蒼くんの名前でかかってきた電話は、高校のクラスメイトの高野くんからだった。

「分かった、どこにいるの?」

高野くんから居酒屋の場所を聞いて、蒼くんの迎えに行くことにした。
蒼くんに呼び出されるのはこれで何回目か、もう、分からない。

「蒼くん、帰ろ」
「あ〜!るな!なんでいるの〜?」
「蒼くんが高野くんに言ったんでしょ?」
「あー、そうかも」

ごめんごめんと笑う蒼くんは、ずっと変わらない。
高野くんに謝って、私は蒼くんを車に乗せた。



 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
( 蒼side )

「瑠菜、こっち方面違う」
「あってるよ、蒼くんの家こっちだよ」

2人の家とは反対方向に車を進める瑠菜を見て、咄嗟に違うと言ったものの、間違っていたのは俺の方だったらしい。

「あ、明日休みだよね、どっか行く?」
「ちょっと酔っ払いすぎだよ」

気をつけてねと心配してくれるところとか、俺のことをわざわざ迎えに来てくれるところとか、そういう優しさがたまらなくすきで、大切にしたいと思ってた。

「瑠菜、俺さ、付き合えてから幸せで、これからも瑠菜とずっと一緒にいたい」

瑠菜の顔は、見れなかった。
もう、とっくに酔いは冷めていたから。

「なに言ってるの、蒼くん。私たち、もう別れてるんだよ」
「あー、そうだったな、」

俺だけがずっと、瑠菜を忘れられないまま。


《優しくしないで》

5/3/2024, 2:24:52 AM