Mey

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子どもを見てくれていた夫が「ママ、ちょっと来て」と私を呼んだ。
今日は日曜日。午前中の家事を済ませた束の間の休息時間。この後は、昼食を作らなければならないと言うのに。
「よっこらしょ」
わざと行ってあげている感を出しながら夫と子どもの元へ行く。
そこには、らくがき帳のページいっぱいに書かれたひらがな。字を書き始めた幼稚園児特有の可愛い鏡文字がたくさん。
「にちかちゃん、いっぱいかいたねぇ。じょうず、しょうず。よくかけてるね!」
次女のにちかちゃんが私に褒められて嬉しそうにしている。
夫は不満気に私に言った。
「…全部左右反転、逆さまの字だよ?直さなくても良いの?」
「良いの、いいの。自然に直るんだって。いちかちゃんもなおったもんねー」
塗り絵に夢中になっていた長女が「うん!」と笑った。
「いちかの文字は、ママがなおしてくれたんだと思ってた」
パパがポツリと呟く。
「なおしてないよ。いちかちゃんは、ママのマネっ子したり、お風呂のひらがな表で覚えちゃったんだもんね。いちかちゃん、天才!にちかちゃんもてんさい!」
二人まとめてぎゅううっと抱きしめると、ふたりともぎゅううんっと抱きしめ返してくれて、あーーすっごく幸せ。
「にちかちゃんの逆さまの字、かわいいねぇ」
「かわいいねぇ。あたしはかけなくなっちゃった」
「難しいよねー」

にちかちゃんのらくがき帳のまっさらなページ。
最初に書いたのは、鏡文字の『にちか』
パパが大きな笑顔で拍手した。
「自分の名前が書けるの?すげぇじゃん!」
「ほかにもかけるよ!『いちか』」
「おーすげぇ!おねえちゃんの名前まで!いちか、見てみて!にちかが書いた!」
父娘3人が鉛筆を手に取りはしゃいでいる。

字を書き始めたばかりの幼児の時期しか見られない、左右が逆さまの鏡文字。
可愛くて、私は大好き。




逆さま

12/6/2024, 11:14:01 AM