NISHIMOTO

Open App

僕が一番そばにいた。
迷子のような顔をして道端に転がっていたのを招き入れたのは僕だ。
しかし君は曲がらない性根と礼儀正しい所作を見せ、なんだか殿上人が遊びに来たらうっかり高級車から落ちちゃったというような、そういう印象を抱かせた。
その面影は今も尚いっそう。でもきっとそれは僕だけが感じる幻視だろう。
煌びやかに、まばゆいステージに立つ君を高貴な人と見るにはずいぶんと俗っぽい。チャラチャラとした服装も、ギラギラ射るようなパフォーマンスも、君が地に足を付けて一歩一歩進んだ成果だった。
努力で手に入れたケガレを捨てて、僕だけの美しい、人ならざるほどの何かに戻ってみて──。
「なァんて、ね」
そうしてあの小さな箱庭で一緒にいようなんて言えないので、僕は今日も君の隣に立つ。
この努力家で美しく、低俗に趣味が悪く、されどもやはりかっこ良い人間の隣を手放すのもそれなりに惜しかった。

4/10/2023, 10:16:07 AM