ストック1

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凍てつく星空はとても美しいが、わしには寒すぎる
わしはこの世の厄払いをするために、褌一枚で深夜の雪原で祈りを捧げておる
一晩中、日が昇るまで続けるのだ
……正直に言おう
祈りなんて捧げておらん
寒すぎてとっとと帰りたい
わしは老師と呼ばれ慕われているんだが、世は国際的に色々大変なことになっているので、立場上、なんとかせねば!と軽い気持ちで言ったのだ
実際なにか行動に移す気は全く無いのに
そしたら、さすがは老師様!とかみんなが盛り上がってしまって
では寒中の祈りをなされるのですね!と、わしがなんにも言っとらんのに勝手に話を進めおった
わしは慄いた
この老体でそんな真似をしたら死んでしまう
まさしく年寄りの冷や水
こやつらは一体なにをほざいておるのか
そんなのは自分でやれ
そう思ったのだが、期待の視線が重くてな
拒否できずに今に至る
それにしてもいつになったら日は昇るんだ
だいぶ長い間待っているんだが
わしは世界のためではなく自分のため、早く朝になってくれと祈った
なぜわしがこんな目に合わねばならん
わしにこんなことをさせた連中は今頃、ベッドの中でぬくぬくと夢を見ているのだろうな
憎たらしい!
ああ、だが澄み切った星空は綺麗だな
なんだか星がだんだんと近くなっておるような
体が軽いような
……いかんいかん、危うく昇天するところであったわ
もはやわしの肉体も精神も限界だ
祈りなぞ知ったことか!
恥も外聞も誇りも捨ててわしはもう帰るぞ!
家でシャワーを浴びて、コーンスープで体を芯から温めるのだ!
誰だ、寒中の祈りなどという狂った儀式を考えたやつは!
人を殺す気か!

12/1/2025, 11:05:56 AM