三羽ゆうが

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高く真っ直ぐ咲き誇る向日葵畑の中を、君の手を引いて歩く。夏だというのにひんやり冷たいその手を引いて、奥へ奥へと地平線に向かって歩いていく。

「今年の夏はどう?」

「……程々に、かな」

「そっか」

「ちょっと暑すぎるかも」

「確かにね」

年に1ヶ月、8月限定の友達。この場所この時間でしか出会う事が出来ない。

「今年はどんな夏の風物詩を持ってきてくれたの?」

「今年は〜、これ!」

「……んむむ……何これ」

「これはね、麦わら帽子って言って、頭に被るものだよ」

「むぎわら、ぼうし」

「僕らの住んでる所では、アニメの主人公も被ってるよ」

「へぇー!被ってみてもいい?」

「もちろん。プレゼント」

彼女は嬉しそうに麦わら帽子を被って、その場でくるくるとまわった。

「えへへ、似合ってる?」

「似合ってる。お洒落に見えるよ」

「ありがとぉ!」

僕のスマホアラームが鳴る。あぁ、もう時間か。1時間しか一緒に居られない。というか彼女が1時間しかヒトの姿で居られないのだ。

「……もう今日は終わり?」

「うん。また明日」

「……分かった」

「また明日ね」

寂しそうな彼女の頭をぽんぽん、と撫でて元の世界へ歩き出す。瞬きをすれば向日葵畑はどこにも無く、古びた神社の目の前に立っていた。

あの世界に初めて行ったのは小3の頃。かれこれ通い続けて8年。毎年行けないんじゃないかと不安に思いながらこの場所へ来ている。


お揃いで買った麦わら帽子を被って、倒れてしまいそうな暑さの街へ戻って行った。


『麦わら帽子』

8/11/2024, 10:22:41 AM