駄作製造機

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【神様へ】

『あそこの教会のシスターさん、信仰心が厚いのよ。』

近所のパン屋さんの口癖はいつも教会に住んでいるシスターの話題だった。

この国は神を第一とし、人々は神の下に皆平等であり、神から生まれた使徒なのだと説いた。

数々の色とりどりの家が並ぶ中、唯一共通していたのは十字架を壁に貼り付けること。

彼らは幼少時代より神を崇め称え、神こそ至高とした。

そんな国にある最大の教会。

マリア様の優美な像と、艶やかなステンドグラスが輝く神聖な場で、神の前に跪き祈りを捧げる1人の娘。

『シルウァ。今日も熱いお祈りだね。どうか彼女が救われますように。』

祈りが終わり、ロザリオを握ったまま目を開けた彼女に、黒服を着た神父が激励の言葉を捧げる。

『ありがとうございます。神父様。神様が皆を天国へ誘いてくれることを望んでおります。』

ブロンドのちゅるちゅるとした髪、宝石よりも輝かしいサファイアの瞳。

彼女はシルウァ。この教会きっての信仰心が厚い信者である。

『もうすぐ、、ですね。』

彼女は美しい金のまつ毛を伏せる。

それは何かを恐れているような、悲しんでいるような顔だった。

神父も居た堪れなくなったのか、彼女の肩に腕を回し、ここにいるというように支える。

『神が定められたものなんだ。』

『だからと言ってこんな、、』

シスターは遂に泣き出してしまった。

この国には、神の預言を聞くものが存在する。

選ばれ者としてその者も神同然のように扱われる。

その者が遂先週ほど、この国は隣国から攻め入られて戦争になるだろうと預言を出した。

そしてそれに勇敢に立ち向かうようにもと。

今まで何気ない日常を送っていた人々は混乱し、どうしていいかわからず涙した。

『神父様。私はその日まで此処で祈ります。皆が救われるように。』

『ああ、、貴方も救われますように。』

2人はお互いに十字架を切った。

ーーー

ドオォォン
ドオォォン

爆撃音と悲鳴が交差する深夜。

地響きが鳴り教会が軋みを上げる中、月夜に照らされた金髪が輝く。

『皆様が救われますように。』

彼女は誰もいなくなった教会で尚も祈り続けていた。

バタン!

『いたぞ!』

低く鋭い声に刺された彼女だが、祈るのをやめない。

隣国の兵士は武装したまま内部に入って行き、次々に破壊した。

『おい。』

兵士が隣にいた兵士に話しかけ、祈り続ける女の元へ視線を向ける。

『おい女。祈りをやめろ。』

銃口を向け、冷酷な目で彼女を見つめる。

『いえ。私は此処にいる皆様の救いをお祈りしています。祈りはやめません。』

凛とした声で言い放った女はまた祈りに向かった。

パァン!

背を向けた女を躊躇もなく撃った兵士。

確かな憎悪と、軽蔑の念を込めていた。

『そんなもの祈っても何もならない。』

ドガアアアアアン

彼はそう言いながらマリア像を破壊した。

『ぁ、、、あ、、』

女は息ができないのか、水に打ち上げられた魚のようにはくはくとしながら壊れ落ちていくマリア像を見つめた。

『か、、みさま、、へ、、届きますように、、』

彼女の瞳は輝きを失い、やがて深海を写した。

だが、彼女は手に持ったロザリオを離さなかった。

これは、戦争により壊滅した国の、狂信的なシスターの話。

4/15/2024, 7:39:53 AM