"どうしてこの世界は"
昔、祖父の知人宅には猫がいた。
人慣れしており、怖々触れた手にもっと撫でろと頭を押し付けてくるほど懐っこい猫だった。
座って本を読んでいると、膝の上に飛び乗って寛ぎ出す。時折頭を撫でないと猫パンチをお見舞いされた。
一冊読み終えて、次の本を取ろうにも猫が居るから動けない。声をかけても、ちょっと足をぱたぱたさせても、素知らぬふり。
意を決してそっと両脇に手を入れ持ち上げると、思いの外ミヨーンと伸びて驚いた。
そして猫の足先は全然持ち上がらない。
まだまだ余裕という顔で無抵抗にダランとしている。
結局膝の上からどかすことは出来ず、諦めて猫を撫でながらもう一度同じ本を読み返した。
どうしてこの世界は、この警戒心のない良く伸びる生き物を作り出したのだろうか。
こんなに無防備で大丈夫なのかと心配になったことを覚えている。
6/10/2025, 6:07:06 AM