たーくん。

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テーブルの上に置かれた長ネギ、バレーボール、ハエ叩き。
「ここにある物で自分をアピールして下さい」
アイドルオーディションの最終審査まで残ることが出来たが、ここに来て難題を出された。
バレーボールならまだ分かるけど、長ネギとハエ叩きはアイドルと関係ないような気が……。
「思いついた者は手を挙げてくれ。早ければ早いほど有利かもな」
審査員がニヤっとしながら私達を見る。
早ければ早いほど有利……か。
なら、先手必勝!
私は誰よりも早く手を挙げた。
「はい!私やれます!」
「おっ、君が一番手か。期待してるぞ」
とは言うものの、何をするか考えてない。
こうなったら、勢いで……!
長ネギを口に咥え、左手にバレーボールを持ち、右手にハエ叩きを持つ。
口の中が、ネギ臭い。
でも、こんなことで私は負けるものか。
アイドルになるんだから!
バレーボールを真上に投げ、ハエ叩きをバレーボールに向けて思いっきり振った。
「アハーーーック!(アターーーック!)」
ハエ叩きは空振りし、バレーボールは床に落ち、虚しく転がる。
「……」
オーディション会場はシーンと沈黙に包まれた。
「えー……ご苦労。あっちで待機しといてくれ」
「……はい」
審査員に言われ、私は会場の端へ移動し、座って待機する。
全員のアピールが終わり、審査員から言われた結果は……。
「君は芸人の方が向いている。アイドルはやめて芸人を目指すのはどうだ?」
なぜか、芸人の道を勧められる。
「私、アイドルやめて芸人目指します!って!なんでやねんっ!」
私は審査員に思いっきりツッコミをした。

8/27/2025, 10:14:15 PM