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年が明け、やることも無くなり眠ろうとしたが眠れないでいたあの日の夜。

電気を付けるのは気が引けた。なにか特別やりたいことも、やることも無いのに、明るいところに身を置くのは罪悪感に似た感情を感じるから。

心を落ち着かせたままでいるには、やはり暗闇がいちばんだと思う。

時計を見る。もう少しで夜が開ける。そういえば、近くにある公園は日の出が綺麗に見えると誰かが言っていたのを思い出した。

もう一度時刻を確認して、簡単に身支度をして外に出た。もう少しで夜明けだからか、辺りは完全に暗闇だった。夜明け前が一番暗いと、偉い人が言っていたが本当だと思った。

深呼吸をしながら公園に向かう。息は白くなって消えていく。幼い頃から、自分の吐いた息が白くなって消えていくのが、たまらなく好きだった。

公園に着く。ベンチに座る。冷たい。でも今度は、泣かずにいられた。誰かひとりくらいは、公園にいるだろうと思っていたが誰一人としていなかった。

と思っていたら、少し小太りなお爺さんが、たった一人で公園にやって来て私が座ってるベンチの向かいにあるもうひとつのベンチに座った。

あの人、高校生の頃になついていた先生に似ている。

政治経済が担当の先生だったが、歴史も地理も教えられるすごい先生だった。人間は嫌いだが大学では心理学を学んでいたと言う。

その先生に将来の夢を聞かれた時、私は少年院で働きたいと語った。今となっては全くそんな仕事はしていないが、それでも私にとっては叶えたかった夢であった。

そんな話をした翌日の、その先生の授業に、犯罪防止に関する内容が少し入っていた。世の経済の仕組みを応用させた仕組みらしく、私にはよくわからずぽかんとしていた。私には、経済の仕組みとかそんなものはさっぱりだった。

そのあとその先生と授業のことを話している時、私は無慈悲に

「経済の話とかさっぱりだから、よく分からなかったわ。あまり興味も持てなかった」

なんて言ってしまった。その先生は笑いながらおどけていたけれど、きっと先生は私の話を聞いてこの授業を作ってくれたのに、私はなんでこんな惨いことを言う人間になってしまったのだろう、なんて後悔した。

その先生は、優しい人だった。それなのに私は、酷いことを言ってしまった。あぁ、今すぐ地に頭をつけ謝りたい。ちょうど向かいにいるお爺さんにも、同じような感情を抱いてしまった。

すると、目の前が急にパッと明るくなる。私は急なことに驚いて顔を伏せる。恐る恐る前を見ると、神々しく光る太陽がゆっくりと上へと登っているのが見えた。

お爺さんの顔が、ちょうど影で見えなくなる。それでもきっとお爺さんは表情を柔らかく変えて、そのまま日の出を直接見ずに公園を去ってしまった。

今日という日が、今始まろうとしている。それも、新しい年が今日から、始まるのだ。

後悔はきっと、一生消えないけれど、それでも、なんとか生きていける気がした。

1/3/2026, 2:04:46 PM