「“バレンタイン”ねぇ…」
2月にしては少し暖かい日が差す教室の真ん中でヒソヒソと話す女子に目を向ける。
嬉しそうな顔をしている彼女たちの口から聞こえる潜められた声によって紡がれる話の内容は、どうやら“好きな人”に渡すチョコについてらしかった。
弁当が広げられている机の上に、そのイベントを象徴するものは置かれていない。
『ねぇ。アンタは誰かにチョコあげないの?』
朝、友人に言われた事を思い出して嫌な気分になる。
「何で女から渡さなきゃならんわけ?」
女が男に渡すイベントでなければここまで毛嫌いすることもなかったのだろう。
この先、社会に出れば好きでもない同僚に忖度で渡すなんてこともあるのかもしれない。
腹立たしい。性別をそんなしょうもない事で意識させられなければいけない事に腹が立って仕方ない。
私が俺でも、俺が私でも、世間がそれを許さない事が腹立たしい。
2/14/2024, 1:42:05 PM