せつか

Open App

触ったら怒られる箱があった。
全面に木彫りの装飾が施された綺麗な箱で、私はその繊細な花の模様を見るのが好きだった。
見るだけなら良かったが、触ろうとしようものなら祖母に烈火のごとくに怒られた。
あの時の祖母の顔は、普段の柔和な顔とは違って、まるで鬼みたいだった。
子供の頃は決して中を見ることが出来なかった秘密の箱。それが今、私の目の前にある。

祖母が死んで一年が経った。
もう、いいだろう。
あの箱の木彫りの装飾を触って、蓋を開けて、中に何が入っているのか確かめよう。
「·····」
指でそっと箱をなぞると、繊細な見た目に反してでこぼことした感触が伝わる。
私はごくりと唾を飲んで、蓋を開ける。

そこには――


END


「秘密の箱」

10/24/2025, 4:03:31 PM