『老いの窓辺にて』世界はとうに知り尽くしたと、薄い茶の湯をすすりながら思う。春は過ぎ、夏はただ眩しすぎて、秋は遠く、冬の手前で少しだけ立ち止まる。窓辺には一匹の猫、名を呼んだ覚えはないが、いつの間にか隣にいる。「お前もか」と声に出せば、しっぽだけで返事をする。人生は、大層なものではなかったが、こうして今日も、風が揺れている。――それだけで、まあ、悪くはない。
5/11/2025, 1:07:57 AM