「あなたは誰?」私はこの疑問を問う相手が沢山いる。
例えば、
あの日、蝶の群れを追いかけていた幼稚園くらいの子。小さい手をどんなに前へ前へ押し出したって、飛んでいる蝶は待ってはくれない。群れの中でとりわけ目立つ二匹の蝶にその子は目をキラキラさせていた。だけど、蝶たちの嘘に拐かされて、思うがままに怒って、暴れたら、せっかく近くに来てくれた蝶も逃げるに決まってる。顔が見えないが、私から見た、その背中は何故か悲しそうだった。でも、何故だろう?その子は飛び去った蝶から数枚の葉っぱを貰って居たらしく、手のひら一杯に抱えてる。その葉を見たあの子は、子ども嫌いの私が見ても、なんだか嬉しそうな、まだ焦りが抜けないような様子だった。
例えば、
ある日暮れ、空っぽの虫籠を持ちながら泣いていた小学生くらいのあの子。私は知っていた、その空の虫籠にはクラス1の羽を持つ蝶と密偵のように疑り深い蝶 の2匹が入って居たこと。だけど、あの子は自分が好きで来てくれたと勘違いをして、空けっぱなしのまま、公衆トイレに行ってしまった。案の定、籠の餌を堪能した蝶たちは何処かへ飛び立って行ってしまった。留めて置きたいなら蓋を閉めるなり、近くの大人や友達に監視を任せればいいものをトイレから帰ってきたあの子は蝶が居ないと分かるなり、まるでショクを受けたかの様に慄いて、大粒の涙を流し始めた。ベンチに座って、空の虫籠を両手でぎっしり握っていた。母親と思われる女性が駆け寄ってくるまであの子は泣き止まなかった。女性があの子を宥め家に帰ろうと手を握った瞬間、あの子は「明日は…」と何処か決意を固めた顔で言っていたのを見た。たった二匹の蝶も留めて置けなかったのに明日は違うと本気で思ってるのだろうか?理解出来ない。
例えば、
あの夏、何故か一匹だけで飛んでいる活発な蝶と楽しそうにお喋りをしていた、中学生くらいのあの子。その蝶をよく見れば、蛾であった。だから、他の蝶はその異質さを察知して避けていた。それには気づいてない様子であの子は熱心に蛾と面白、可笑しい会話をしていた。それが案に一匹と一人の日常の様に見えるほどには仲睦まじい様子だった。だけど、蛾が発する特有の音が鬱陶しくなったのか、あの子は途中で話しを切って、家に帰ってしまったようだ。その後も何匹かの蝶と交流を図ったようだけど、どれも上手くいってない様子だった。あの蛾はあの子に心酔し切って居たのに、わざわざ他と共有させて自分の内に沸いた独占欲をコントロールしようとするなんて、変な子だ。
例えば、
ある年の夢に出てきた老人。その老人にはパートナーがいた。その人と笑い合って、小さい子供にその皺くちゃになった顔と手の何が自慢なのか、誇らしげな顔をして笑いかけて居た。この光景は母が言って居た理想の形と酷似して居て、見ているだけで嫌悪がさした。だけど、私の目はその老人の姿に釘付けな様で、とても可笑しな感覚だった。
今あげた例えでも4人、その他にも手にナイフを持った女性を頑張って部屋に入れない様にしている子供や空気も読まないでペラペラ変な事を言う学生など、私が「あなたは誰?」と、問いたい輩は沢山いる。だけど自分しか、それを突き止められない。周りの人間に聞いても、いつも同じ答えを口にする。答えになってない解を言う。一言一句違わず、
「そいつらは君自身だ。」と。
冗談も甚だしい。私は絶対に認めない。
では、何故問いたいのか。周りからうるさく言われるなら探究などしないほうが静かに暮らせるのに。探究を辞めない理由を訊かれたら、私は一番にこう答える。「うっとうしいからだ。」と。
日常生活の中で今の私と関係しない事柄が次々に溢れ返ってきたら、しかも、後味の最悪な感情まで置いていくのなら、誰だって嫌だし、止めたいと思うものだろう?
だけど、自分が求める研究資料は何処にもない。解を求める公式も無ければ、道順も曖昧と来てる。
だから、私は今日も問いかけるしか出来無いのだろう「あなたは誰」と。
2/19/2025, 3:56:30 PM