急に貧乏になってしまった。
何故なら、父が病気になったから。
身体的なものでなく、頭の中で。
それはある朝のこと
「今日で世界が終わる」
突然父がそう言った
今日で終わるので、やりたいことをして、食べたいものを食べるべきだ。という。
何を寝惚けた事をと、皆始めは取り合わなかった。
しかし父は仕事に行かなくなったし、お金はあっても仕方ないと言って全部遣おうとした。
私たち家族はようやくそんな父の奇行に慌て、止めようと頑張ったがすでに遅く、気がついたら我が家の貯蓄はなくなっていた。
この明らかな精神病は、眠るとリセットされるらしい。
眠る前に父は必ず涙を流し、私たちを順に抱き締め世界の終わりを憂いた。
そして翌朝にはリセットされ、今日で世界が終わると絶望するのだ。
今は入院しているが、きっと父は今日も世界が終わる日を一人繰り返しているだろう。
『世界の終わりに君と』
6/8/2024, 8:24:58 AM