【木枯らし】
【創作】【宵(よい)と暁(あかとき)】
1/16 PM 4:20
「ちょちょっ、待っ…真夜(よる)くんっ、
この曲なに!? 静かに始まったと
思ったのに急に激しい……!」
「ああ……暁の前では弾いたことなかったかも
しれない。『木枯らしのエチュード』だよ」
「こ、が、ら、し、の、エ、チュー、ド……。
うわぁ……譜面検索したら
気持ち悪いくらい細かい。
真夜くんの指の動きもどうなってるの……」
「まぁ……正確で速い動きを練習するための
曲だろうから……」
「木枯らしにしては激し過ぎるし、
練習曲にしては壮大で鬼難過ぎない?
よく喋りながらこれが弾けるね……」
「いや、結構ミスタッチしてる」
「わたしにはどこがミスか全然わかんないよ~。
……この曲、有名?」
「どうだろう……。エチュードなら、
一般的にはこっちの方が有名かな」
「あ! 知ってる知ってる。『革命』だ」
「暁が好きなのはこれ。『幻想即興曲』」
「あ~、うんうん、好き。
ずっと耳が気持ちいいよねぇ、この曲」
「宵はこれ。『ノクターン 第2番』」
「ふふ。宵ちゃん実は甘いメロディーの曲
好きだよね。真夜くんが好きなのは?」
「オレは……弾くのが楽しいのは
『英雄ポロネーズ』。
この辺りまで来ると知ってるフレーズ
だと思うけど」
「うん、ここから知ってる。……でも
ちょっと意外。『別れの曲』とかの方が
真夜くんのイメージに合うっていうか」
「弾くのが楽しいのと、聞くのが好きなのは
また別だから」
「そっか~」
「……ショパン祭してるとこ悪いんだけど、
そろそろ休憩終わりにして、練習再開
するわよ、暁」
「あ、ごめんねしぃちゃん。つい真夜くんの
ピアノに夢中になっちゃった」
「気持ちは分からないでもないわ。
正直、ここまで弾ける星河(ほしかわ)くんに、
うちの合唱部の伴奏をお願いしてるのは
申し訳ないくらい。
コンクールに出る特訓したりしないの?」
「? ……ピアノはただの趣味だから」
「趣味の域、超えてると思うけど……」
1/17/2023, 3:11:50 PM