どこかのただの大学生

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波音に耳を澄ませて


冬の海が好きだ。

海のない街で育った。
海まで行くには1時間半くらい山道を歩かなきゃ行けなくて。

高2の冬。
元旦の翌日。
親に何も言わず書き置きだけして静かに家を出た。
まだ日ものぼってなくて、たまに車が通るだけの静かな街を歩いた。
初日の出ではないから海岸に人はほとんどいなかった。
薄着で出てきたことを後悔しながら、靴を脱いで海に入った。
歩きながら打ち上げられた海月を足でつついていた。
波が冷たくて、心地よかった。
辛くて不安定な日常を少しだけ忘れて、波音に耳を澄ませていた。

7/5/2025, 2:39:47 PM