「正直に答えてくれ。お前にとって、俺はどんな風に見えている?」
奴――中学の頃からの悪友の唐突な言葉に、俺は思わず頓狂な声をあげる。
「どんな風って……どう言えばいいんだ?」
「どんなでもいい。ただ、お前にどう見えてるかが知りたいんだ」
ほう。何かよくわからんのだが、そこまで言うのなら。
「まるでこの世のものではないくらいに輝かしい」
「他には?」
「穏やかな顔をしている」
「ほう」
「どこから見ても完全に自由だな」
「そうなのか……」
だから。
「だから、そろそろ行った方がいいぞ。大丈夫だ、こっちはこっちで何とかする。いつかまた会うときにおんなじことをこっちから訊いてやるから……」
そこで、俺は言葉を切る。そして、誰もいないはずの虚空に拳を伸ばす。
「何にも心配すんな」
それは、俺が最期に奴に言いたかった正直な思い。あの日、鬼籍に入った悪友に、伝えられなかった言葉だった。
6/2/2024, 12:51:41 PM