誰しも『誰にも言えない秘密』がある。
寝坊してズル休みをしたとか、お菓子を万引きしたとか、オネショをしたとか、イジメに加担したとか。
——同性に恋をしたとか。
誰にも言えない秘密といっても程度はある。
俺にとってはこの恋を誰かに打ち明けるのは本当に誰にも言えない事だった。
だからこの秘密は墓まで持っていって、いつかあの世で会った時に実は俺お前のこと好きだったんだぜ、って笑い話にしようと思ってた。
思ってたのに。
なんの因果か恋をした男と結ばれ夜の営みなんかもして。
これ以上の幸せなんてないと感じている。
そう感じているからこそ、心の奥底の底を剥がした先にある形容し難い感情が頭へ一直線に語りかける。
また、置いていかれたらどうなっちゃうんだろうな。
分かりたくもない分かりきった答えを抱えて、今日もキスをする。
コイツがエスパーだったらいいのになんてバカなこと考えながら。
なぁ、今から俺と一緒に死んでくれないか。
なんて、こんな事、口が裂けても言えないんだけどな。
キスされて恍惚の表情を浮かべた愛しい人に見えないように後ろ手で何かを握りつぶした。
6/5/2023, 11:35:13 AM