『平穏な日常』
毎朝、決まった時間にアラームが鳴る。
カーテンを開けると、昨日と変わらない陽光が部屋に差し込んだ。
トーストの焼ける香ばしい匂いと、沸騰するケトルの音。
テレビのニュースは、どこかの国で起きた些細な騒動を伝えているが、この部屋の静寂を破るほどではない。
私はコーヒーを一口啜り、完璧に整えられた日常を味わう。
ふと、窓の外に目を向けると、街路樹の影が、少しだけ不自然に静止していた。
風が吹いているはずなのに、葉の一枚も揺れていない。
「……またバグか」
私は溜息をつき手を振ると、空間に浮かんだ〈再起動〉の表示を指でタップする。
数秒後、世界は再び心地よい風に包まれた。
この完璧な平穏を維持するのも、案外骨が折れるのだ。
3/11/2026, 10:19:57 AM