肩口で切り揃えた真っ黒な髪。
夜の闇を溶かし込んだような真っ黒な目。
日に焼けていない真っ白できめ細かい肌。
薄っすらと色づいた頬と唇。
似合うからと着せられたレースとフリルのついた服。
ギュッと冷たい手に握られた。自分と同じ大きさの手。
左横に顔を向ければ全く同じ顔が自分をみていた。
同じように瞬きをして、呼吸も揺れる髪の一筋までぜん ぶ同じ。
ジッと静かに見つめ合う。なんだか不思議な気分になっ て握られた手を握り返した。
「まるで鏡のようね」
どちらが言ったのか分からない。クスクスと笑いあって その様ですら全く同じでまた笑った。
そっくりなんて言葉じゃ足りないね。
【題:鏡】
8/19/2023, 5:53:39 AM