恋(れん)

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「未来」

私にはこの先の未来がない。何を望んでも何かを得ても、その先の未来には何も残っていない。私は近々死ぬのだ。皆が悲しんでくれた。皆が同情してくれた。皆が泣いてくれた。だけど、ただ一人だけ、私のお見舞いには来てくれなかった。それは、私の彼氏だ。彼は涙もろく、きっと私と会ったら泣いてしまうからだ。現実逃避したいからだ。
だけど、私は彼に会いたい。だから、私が会いに行く。彼の家はすぐそこにあるから、案外すぐに着いた。インターホンを鳴らしてみれば最愛の彼が出てきた。彼はびっくりしながらも門を開けて近づいてきてくれた。だけど、その目はものすごく腫れている。きっと、ずっと泣いていたのだろう。彼はこちらに来ると、
「…会いたかった…でも、会いたくなかった…!なんで、なんでだよぉ………」
私に抱きつくと泣いてしまった。
私だって死にたくて死ぬわけじゃない…


それから、私が死ぬまでの間彼はずっと私のそばにいてくれた。ずっと、ずっと…

6/18/2023, 2:24:19 AM