雷鳥໒꒱·̩͙. ゚

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―紅茶の香り―

扉を数センチ開くと、
暖かな光が隙間から漏れた。
その光に吸い寄せられるように、
私は扉を大きく開き、中へと足を踏み入れた。
夕暮れ時の暗い路地裏から
いきなり眩しい所へ入ったせいで、
しばらくは目が眩んでいて、何も見えなかった。
身体中が少しずつ温まって、
穏やかな気分になった。
気分が良くなってきた頃、
不思議な香りを感じた。
強いような、柔らかいような、
鼻に抜けるほど刺激的なような。
心地よい渋みもあるけれど、
淡いような、不思議な香り。
でも、不思議と心が落ち着く香り。
紅茶の香りだろうか、と気づき始めた時には、
目が眩しさに慣れてきて、
段々と見えるようになった。
目の前の洋室に圧倒していると、
私に声が掛かった。
「いらっしゃいませ
よくここへ辿り着きましたね
ここまで来ればもう安心ですから
くつろいでいってください」
紅茶の注がれる音がした。
「…さぁ、聞かせてくださいな、
貴方が苦しむ訳を
…この私が、必ず貴方を導きましょう」

10/28/2022, 2:46:37 PM