#力を込めて
「……はる? もう寝た?」
「ん、起きてる……。どうかした?」
「あぁ、えっと……」
街は寝静まった、空も漆黒に染まっている時間。
さっきたっくんにおやすみを告げてそれぞれの部屋に入った、はず。
保湿だとかケアも全て終わっていた私は、少しSNSを覗いてすぐ布団に入っていた。
眠りにつこうとまぶたを閉じたところで控えめにノックする音とたっくんの声が聞こえて、聞き逃さないよう耳を澄ました。
「……いいよ、入ってきて。」
いつも薄着で寝がちな私は起きる頃に服がはだけていることがたまにあって、見られたくなくて夜から朝にかけて『部屋に入ってこないで』と言っていた。
でも今日は特別、たっくんが心配だから。
いつも布団に入った瞬間寝てしまうようなたっくんが、まだ起きていて私の部屋を訪れる、それだけで何かあったのかと思う。
「はる、……抱きしめていい?」
「うん、おいで。」
「ん……」
少しやつれた顔で、目は不安そうに彷徨っている。
今日朝も夜も一緒にいたけど、全然そんな感じじゃなかった。
強がって平気ぶってたのかな。
「……ごめん、……っ」
「大丈夫、疲れちゃったんだよね? 竜也、いつも頑張ってるもんね。お疲れ様。」
声を押し殺して泣く竜也の腕には、離れまいと言うように力がこもっていた。
10/7/2024, 11:42:35 AM