いろ

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【高く高く】

 目にも眩しい蒼穹を、君が翼を広げて飛んでいる。出会った頃には羽の動かし方も魔術の使い方も何一つ知らなかった幼い子供。路地裏で野垂れ死ぬ幼子なんて珍しいものでも何でもなくて、目に見える範囲だけでも助けたいなんて殊勝なことを考えるほど善人でもないつもりだったのに、何故か手を差し伸べていた。
 痩せ細った君の身体を抱き上げたは良いけれど、子供の世話なんてしたことがなかったから何をどうするべきなのかもわからず、君が熱を出すたびにお人好しの友人のところに駆け込んでは、慌てすぎだよと大爆笑された日々が懐かしい。
 地上から君を見上げる私の視線に気がついたらしい君が、大きく手を振る。無邪気で朗らかな笑顔を君が浮かべられるようになったこと、それが私にはこの世の何よりも尊いことのように思えるんだ。
(高く高く、どこまでも自由に飛んでいきなさい)
 神の怒りを買い、雷霆により翼を断たれた私と違い、君にはその手段があるのだから。
 手の中の杖を、天上で遊ぶ君へと向ける。人間の親が自分の子供の幸福な未来を願うように、ありったけの祝福の魔法を愛しい君へと捧げた。

10/14/2023, 11:42:31 PM