ドナルド・ドュフ・ウィーズリー

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駅のコンビニ前で子供が泣いていた。
片腕の取れたぬいぐるみを抱きしめながら泣いていた。
子供の手を引く母親も辛そうに眉を顰め、泣きそうになっている。

「あともう少しだから」

母親が言うが、子供は母親に着いていくのが嫌だと言って近くのコンビニに入りたがる。そんな子供の小さな腕を母親が無理やり引っ張るが、子も同様に、意地でも動かないとばかりに地に足を縫いつけたままだった。


そんな様子を、俺は見ていた。
周囲は母子たちを面倒くさそうに遠目に見るか、母親を憐憫の目で見た。
子供は泣きわめき、ついにはヌイグルミを”落とす。”


そこでやっと俺は動くことが出来た。


「すみません。ちょっとお話いいですか?」


___一体、どれだけの人間が本当の母子だと思ったことだろう。


海外では、物を落とす行為がとある事件を指し示す。

俺は子供に向き直った。

「怖かったね、大丈夫?」
「……お兄さんも、大丈夫?」

え?

刹那、ガツンと後頭部に衝撃が来る。目の前がチカチカと光った。
そこから俺の記憶は無い。

どうして『父親役』は居ないと思ったのか。

3/26/2023, 10:46:03 AM