町は、パントマイムの集団が動いているような、不気味な印象を受けた。
夕方の太陽の下、もはや、光の熱は失われ、冷えた砂でも撒かれたような肌寒さがあった。
犬を散歩させている老人を見て、翔子は、セリフのないサイレント映画を見ているような気持ちになる。
たぶん、幸太から振られたせいだ。もう家に帰っても彼はいないのだ。
どうしていいか分からなかった。ひたすらに、寂しさと喪失感だけが胸にくる。
道路から下がった場所に川が流れていて、彼女は石の階段を降りた。
すると設られたベンチにカップルがいて、翔子の気持ちは乱れる。
そこから少し離れた場所のベンチに座る。
「よし」
彼女はスープジャーを、後ろのバックから取り出した。中にはカップラーメンが麺二つ分入っている。
決めていた。川を見ながら泣きながら、たくさん食べるのだ!!
翔子は、割り箸を割って、ジャーの麺をずずーっと啜る。幸太のことが思い出される。思った通り涙が出てきた。
ずるずる。ずるずる。
忘れよう、と思っても思い出すのだから。全部思い出そう。そして、新しい恋をするんだ、わたし。
11/25/2024, 1:59:09 PM