冷端葵

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お気に入り

 人は死後どこに行くのか。ごく稀に世界の裏側に迷い込んでしまう人がいる。
 彼らは現世の中からお気に入りの人を選び、その人間の一生をサポートすることが義務づけられる。所謂守護霊である。
 お気に入りの人間への対応は様々だ。至れり尽くせりで幸も不幸も一生のほとんどの出来事を自ら与えようとする守護霊もいれば、何が起ころうと手出しせず本人の選択を見守る守護霊もいる。多くの守護霊は、最悪の事態が起こらないように見守り、たまにご褒美として幸運を授けるという形で対象の人間の人生を支えている。
 お気に入りの選び方も多種に渡る。生前の自身に近い人間や憧れの対象となる人間を選ぶ者が多く、次いで好意を寄せていた人物を選ぶ守護霊が多い。自分とは何の関わりもなくても、好奇心や同情心を理由にしたり、直感を頼りにしたりして選ぶ守護霊もいる。
 途中で人間を乗り替えることも可能だ。一度お気に入りを決めたらその人が死ぬまで支え続ける守護霊もいれば、少しでも理想を外れてしまったらすぐに乗り替える守護霊もいる。遊び感覚で人間を入れ替える守護霊も珍しくない。
 人間たちは絶えず値踏みされており、死者のお眼鏡にかなえば人生をサポートされる。そんな世界の裏側のお気に入り制度は、生者が知り得ることはない。

2/18/2024, 6:57:48 AM