「一雨来るかな。」
私達の上には真っ黒な雲が空を埋め尽くしている。
西の方はオレンジ色に染まってはいるが雨のにおいがほのかにしている。降りそうだ。
「予報ではくもりだがどうかな。」
「ふうん。」
彼ががしがしと面倒くさそうに頭を掻いた。くせっ毛が寝癖で更にすごいことになっているが妙に様になっている。小憎たらしい。
「シャワー入るか迷う。」
「とりあえず入って来たまえ。人と会うんだろ。」
「はあ…行きたくない。このまま寝たいよ。」
「…そうもいかないだろ。」
私だって行ってほしくない。このままここにいてほしい。まだ君を私だけのものには出来ないのか。
「なに?」
「何もないさ。」
「…雨が降ったら行くのやめる。」
「おいおい。」
「じゃあ行ってくるね。シャワー借りるよ。」
バタンとドアの閉まる音がやけに大きく響いた。
家の中も外も静かだ。
雨はまだ降らない。
あいまいな空
6/15/2024, 3:14:28 PM